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高森明勅
2021.2.7 06:00皇統問題

日本律令と「女帝」

日本律令における「女帝」の位置付けを巡る、
研究史の簡単な整理がある。
なので、いささか以前に書かれたものであり、
別に紹介したこともあるが、念の為に、ここに掲げておく。

「古代史学界では、すでに今回の高森(明勅)氏の
問題提起の数年前から、成清弘和氏や春名宏昭氏などにより、
『養老令』「継嗣令」皇兄弟子条の『女帝子亦同(女帝の子も亦〔また〕同じ)』
といふ記述(大宝令にも同文があった―引用者)に依拠して、
律令制下の日本では、当時のシナと異なり、『女帝は男帝となんら
変わるところのないものとして日本律令に規定されていた』
『日本の律令制では“女帝”は制度的に位置づけられ、予定されていた』として、
女帝の所生子が『親王』(皇位継承候補者)とされる(『女系』の容認)と
見なし、『双方制』といふ親族組織に大きく規定されるものであつた
といふ見解が複数の研究者によつて支持されてきてをり、
これが徐々に共通見解になりつつある。

この前提には、文化人類学の家族・親族論を援用しつつ、
古代日本の双系的(双方的)親族組織論を唱へた吉田孝氏をはじめ、
明石一紀氏・義江明子氏などの研究の展開により、『双方制』は
現段階では通説的な位置を占めるに至つてゐることが背景にある」
(藤田大誠氏「最近の『女帝』論議に関する覚書」、
神社本庁教学研究所編『皇室法に関する研究資料』〔平成18年〕所収)

第三者による研究史の概括として、特に訂正の必要は無いだろう。
又、私の「問題提起」が学問上、決して孤立したものでも、
的外れなものでもないことを、客観的な評価を介して
理解して貰えるはずだ。

男系限定に固執する人の中には、「双系(方)」という
学術用語それ自体を知らないで、「双系なんて無い。そんなものは
『雑系』だ」と息巻いておられた人もいて、少し呆(あき)れた。
学問的に無知な上に、ご自分がすっかり「からごころ
(シナ文明の男系絶対への心酔)」の虜(とりこ)に
なってしまっている自覚も、恐らく無いのだろう。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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